駿「・・・」
女神「異世界で勇者となり、魔王を」
駿「すみません。ちょっといいですか?」
女神「はい」ニコニコ
駿「極めて不愉快ですよね」
女神「・・・」
引用元: ・女神「ハヤオ、あなたは異世界で転生するのです」 宮崎駿「異世界で転生?」
駿「いや、混乱はしてません」キッパリ
駿「引退した老人を引っ張ってきて、違う世界で労働させようとしているですよね?」
女神「いや、ちょっと違いますが」
駿「私はね、ゆっくり休みたいって鈴木さんに言ったんです」
駿「それをこんな三文芝居に」ハァ
駿「そもそも悪人を倒せば、世界が救われるというのが私には解せないんです」
女神「いや、そういう世界なので・・・」
駿「あなた神様なんでしょ?」
駿「なんでそんな状態になるまで放っておいたんだ!」
女神「・・・」
駿「自分の取るべき責任を放棄し、人様の力を借りようなんて」
駿「甘え以外のなにものでもないでしょう」
女神「すみません・・・」
女神「・・・」
駿「今からできることはないか、ふたりで考えましょう」
女神「ハヤオ・・・」ウルッ
駿「では、紙とペンをください」
女神「え?」
駿「」カキカキ
女神「人々の生活水準に関しては、近年、工業化が進み豊かになりました」
駿「」ピクッ…カキカキ
女神「しかし、魔王率いる魔族が世界を手に入れようと動き出したのです」
駿「」カキカキ
女神「そして、魔王の侵攻は王国に迫…」
駿「」カキカキ
女神「聞いてます?」
駿「・・・ええ。くだらないなぁって思って聞いてますよ」カキカキ
女神「あなたの為に説明してるんですよ!?私たちだって暇じゃないんですから!!」
女神「大体、余計な説明を省くために下界で異世界転生ものを流行らせたりして」
駿「最新の流行のものはほとんど見てないです」ハァ
駿「私はね、“好きなことをやってるだけで十分だ”って言って、昔ながらに生きているんですよ」
女神「そんな身勝手な!」
駿「いや、身勝手なのはあなたでしょ」
駿「そんなくだらんアニメを作ってる暇があるならね」
駿「自分で作った世界と向き合いなさいよ!!!」
女神「・・・」
女神「今説明してるじゃない!」
駿「場所はね、作ることできるんですよ。でもね人間だけは作ることは出来ないんです」
駿「そこに生きてる者たちが何を考え暮らしているのか。あなたは説明できるんですか?」
女神「・・・」ウッ
駿「半端な仕事はやっちゃいけないです。それは本当に思います」
女神「なら、あなたならわかるっていうの!!?」
駿「わかるわけないでしょ!神様じゃないんだから!!」クワッ
駿「自分で、すぐ自分を許せる人は、大した仕事をやらないよ」ムス
女神「・・・」
駿「企画の発端っていうのは思い付きでも何でもいいんですよ」
駿「ただそれに肉付けしていく過程でキチンとやらなくちゃいけないんです」
女神「何の話してます?」
女神「いや・・・ないですけど」
駿「なんで?」
女神「女神なんで」
駿「現場を知らないのに、現場の人間の何を知れると言うんですか」
女神「・・・」
駿「一度、行ってみましょう」
巫女「ここが始まりの街 ヴィーヒムです」
駿「その恰好は?」
巫女「ああ、巫女の体を借りてます。女神ですから」
駿「なるほど」
ガヤガヤガヤ
巫女「これでも田舎なんですよ」
ポーポッポー⋥⋤⋥⋤⋥⋤⋥⋤⋧。シュシュポッポー♪
駿「うん?あれは蒸気機関ですか?」
巫女「ええ、魔法で動いてますが原理はほとんど同じです」
駿「ちょっと見てきていいですか?」キラキラ
巫女「え、ええ・・・」
巫女(もう数時間も機関車を眺めてる・・・)
巫女「ハヤオ…次のところに…」
⋥⋤⋥⋤⋥⋤⋥⋤⋧。シュシュポッポー♪
駿「おお」キラキラ
巫女「聞いてます?」
駿「ええ、聞いてますよ」キラキラ
ガヤガヤ
巫女「ここは、街の広場です。露店も毎日出てるんですよ」
巫女「転生した勇者は、まずここで装備を揃えます」
<ヨッテッテー
駿「賑やかですね」
巫女「ええ、ここら辺は強い魔族はいないので活気に溢れてるんですよ」フフフ
駿「噴水もあるのか」フム
巫女「近くに水源がありまして、そこから魔法で引っ張って来てるんですよ」
巫女「田舎だからこそ、こういう自然との調和を忘れてないんです」ニコ
駿「・・・」
巫女「基本的には住民たちは汽車で移動してるので、外には出ないのですが」
駿「あれは?」
モニョモニョ
巫女「あ、下級魔族のスライムです」
駿「・・・」
モニョモニョ
駿「なるほど」
女神「どうです?あの素晴らしい世界を守りたくなったでしょ?」
駿「・・・」
女神「蒸気機関も発達してるし、民も豊かでしたよね?」
女神「それでいて自然を愛する美しい民なんです!やはりそれを脅かす魔王は」
駿「人もミミズもみな同じというところに、もう一回戻ったほうがいいよ」キッパリ
女神「・・・」
女神「・・・は?」
女神「下級魔族のスライムですか?」
駿「あれは元々どこに住んでたんですか?」
女神「湿地帯とか…水辺とか?」
駿「じゃあ、機関車の線路に住処を奪われたんですね」
女神「・・・」
駿「それにそこの水を広場の噴水に回してるんですよね?」
女神「ええ」
駿「誰も飲まないのに」
女神「・・・」
駿「モニョモニョから住処を奪って、何が楽しいのか理解に苦しむ」
女神「・・・」
駿「人間の都合のいいものだけが自然だと思われているんです」
駿「モニョモニョは要らないものだから自然ではない。殺したってかまわないんです」
駿「そのような人間中心主義的な考えは根本的に間違いだと思いますよ」
駿「人も獣も木々も水も、皆等しく生きる価値を持っている」
女神「ストップ!ストーーップ!!!」
女神「それが、なんで人間と自然についての話になるんですか!!」
女神「魔族が!そこまで!来てるの!戦わないと!人間が終わるの!!!」
駿「いや、だから悪者倒してハイおしまいって考え方が間違ってるんだ!!!」クワッ
駿「そんなんで子どもに夢を届けられるか!!!!」
女神「届けなくていい!!!世界を救え!!!!」
駿「それをなくす事は出来ないので、むしろどういうふうにコントロールするか」
駿「それが人類に課せられた大きな課題だと思うんです!!!」
女神「そんなの理想論でしょ!こうしてる間にも魔族がそこまで迫ってるの!!!」
駿「理想を失わない現実主義者にならないといけないんです!!!」
駿「理想のない現実主義者ならいくらでもいるんですよ!!!」
女神「じゃあそうなってくれよ!頼むから!!!!」
駿「」ハァハァ
女神「へ、屁理屈が過ぎませんか?」ハァハァ
駿「屁理屈?」
女神「あなただって、蒸気機関車に目を輝かせてたじゃない」
駿「ええ、立派な汽車でした」キッパリ
女神「ならあなたも、あの文明を守りたいでしょ」
駿「ええ」
女神「じゃあ屁理屈こねてないで・・・戦って」
駿「私は、アニメーションを作ることしか能がない男です」
駿「それが、僕の性分ってもんです!」
女神「いや、あの世界にアニメありませんから」
駿「・・・」
駿「そんなところ行くわけないでしょ!!!!」
女神「もう!!!じゃあアニメ作れば!!?作ればいいんじゃない!!?」
駿「やりましょう」
女神「え?」
駿「アニメーターを集めてください」
女神「いや、ちょ」
駿「それぞれができる範囲のことをやればいい」
女神「いや、だからって…アニメってどうやって」
駿「もう、とことん考えることです。ありとあらゆる方向を探るんです」
女神「いや、だから…」
駿「とことん困ると、奥のほうでふたが開くんです」
駿「そのふたが開くと、最初に考えもしなかった方向が見えたりする」
駿「それで、一歩進めるんです!!!!」
女神「自分で考えろってこと!!?」
駿「混乱?」
女神「本もまともに流通してないよ!?」
駿「それでも、創作の現場をストップしちゃいかんでしょ」
女神「いやだから混乱するって」
駿「誰が混乱するっていうんです?」
女神「いや…だから…」
駿「ええ?誰が混乱するっていうんですか?」
駿「誰が!混乱するっていうんだ!!!!」
女神「」ビクッ
何度もいうが、異世界にアニメはない。
しかし、仕事モードとなった宮崎駿にとって、それは些細な問題であった。
諦めた女神は、魂と化したアニメーターを集め天界にアニメスタジオを開いたのだ。
魂「どうでしょう?」
駿「動きに色気がない。死ぬ気で描け」
魂「もう死んでます」
駿「そうか、寝なくて済むのか。便利だな」
女神「!?」
駿は気づいてしまった。
肉体は衰えていくが、大いなる目標がある魂は衰えないことに。
その気づきは・・・天界スタジオを更なる激動へ誘った・・・。
魂「女神P!僕らはもう死にませんよ!」ハハハハ
女神「生まれて初めて、死について考えてる・・・」カサッ
駿「なんだこれは!!!気合いを入れろ!!!」
こうして…異世界用長編アニメ『蒸気街の水辺のモニョ』が完成したのだ。
パチパチパチ
駿「」スッ
駿「えー皆さん。まずはお疲れさま」
\ パチパチパチ /
駿「思いかえせば、ここに連れてこられ無理難題を押し付けられた時には」
駿「どうなることか…と皆さんは思ったでしょう」
ドッ \ ハハハハハ /
駿「この作品に向き合えたことは…我々の誇りです」
駿「これはひとえにスタッフの一人ひとりの真摯な働きによるものだと思います」
駿「本当に皆さん、どうもご苦労様でした」ペコ
\ パチパチパチ /
女神「よがった…よがったよぅ…」
パチパチパ…
駿「これが終わったら次の作品の準備しますから」フフッ
ザワッ
ザワザワ
女神「まじか」サァァァァ
駿「ここ終わったらさっさといかないと楽しみにしてるという描写にならないでしょ」
駿「極めて初歩的なミスで話にならん!!!!」
駿「どんな丁寧に描いても、ちょっとした違和感で全て崩れてしまう」
駿「それがアニメーションなんだということをよく認識してもらいたいと思います!!!」
女神「・・・」
駿「・・・女神さんも本当にお疲れさま」ニコ
女神「・・・」ポロポロポロ
女神「ありがとうございますぅぅぅぅぅぅぅ」ウワーン
異世界にはアニメがない…その問題については“女神の啓示”として
各地の神官にアニメーションの基礎を叩きこみ…無理やり異世界にアニメを生み出した
そして、完成したフィルムはユニークアイテムとして
ヴァーニディアドラムの人間界だけではなく魔界にも配られたのだ。
のちにこれを見た王族と魔王は・・・
王様「もっと魔族のことを知ろう」
魔王「話し合うって大事だよね」
と言ったという。
これが和平に繋がるのはもう少しあとのお話・・・
女神「ハヤオ・・・」
駿「なんですか?」カキカキ
女神「あなたは元の世界に帰りなさい?」ニコ
駿「今、新作を」
女神「帰ってください」ニコ
??「宮さん、宮さん」
鈴木P「宮さん?」
駿「」ムニュムニャ
駿「おや・・・鈴木さん、どうしたの?」
鈴木P「いや、時間になってもスタジオに来ないからさぁ。もう心配したよ」
駿「ああ、夢を見てたようですね」ノビー
駿「・・・」
駿「鈴木さん」
鈴木P「??」
駿「新作をつくりましょう」ニッコリ
完
面白かった
これは名作
良作でした
これ実話だったのか!?
駿の色々な発言集めてきて整合性が取れるように少し改変しながら物語が進んでる
すげぇ!よくわかったな!
宮崎駿 名言でググると8割のセリフが出てくるよ!笑
かなり面白かった
かなり笑った
乙